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中川昭一氏にエールを!

≪中川昭一氏にエールを!≫

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 早くも日経新聞をはじめとして、政府の財政出動を牽制する風潮が出始めている。

 財政再建路線に不透明感 麻生内閣発足(日経新聞)

 24日発足した麻生太郎内閣では、小泉政権以来の内閣が最重要課題に掲げてきた財政健全化の優先順位が下がり、景気対策重視の姿勢が強まりそうだ。財務相には「財政出動派」の中川昭一氏が就任。「景気をよくすることが、私にとって最大、最初にやるべきことだ」と述べ、景気対策を最優先する姿勢を打ち出した。近づく衆院選をにらみ、財政出動を求める声が強まりやすい中、財政再建路線の先行きには不透明感が漂う。

 中川財務相は24日夜の首相官邸での記者会見で「経済を回復し、国民の暮らしや仕事を元気にすることによって、財政再建をなし遂げなければならない」と強調し、財政再建よりも景気対策を優先する考えを表明した。(07:00)



 今回もまたこのようなマスコミ報道の誘導で、「財政出動による景気回復」と、「国債の発行」という主張はタブーとなり、日本の景気回復への道は閉ざされていくのだろうか。

 小泉首相が国債発行額を30兆円以内に抑制するという公約を掲げたが、結局30兆円以上になってしまって一斉にマスコミのバッシングを受けていた。

 小泉氏の先見の無さか、経済に疎い部分を竹中氏で補おうとしたために受けた「自業自得」の結果であって、今回の麻生政権の時とは中身が全く異なるものだ。

 第4回「これからの日本経済が注意すべき点は」(2007/12/07)

 デフレスパイラルを招いた橋本内閣の財政再建

 ところが、結果はグラフにあるように、改革初年度の97年度には財政赤字が減ったように見えたものの、そこから経済が5・四半期連続マイナス成長になってしまった。それもそのはずで、当時の日本経済は家計が貯蓄したカネを政府が借りて使うことで回っていたのに、政府がいきなり財政再建だといってカネを借りるのをやめたわけだから、経済は前述のようなデフレスパイラルに入り一気におかしくなってしまったのである。

税収と財政赤字のグラフ
<図をクリックで拡大>

 その結果、消費税率を上げたのに、税収は増えるどころか減少。15兆円減るはずだった財政赤字は逆に16兆円も増え、99年には38兆円に拡大してしまった。このケースはバランスシート不況下で財政再建をやると、景気がめちゃくちゃになって税収が落ち、むしろ財政赤字が増えてしまうという事実を実証してくれた。

 その後、橋本首相も間違いに気が付いて、翌年6月には大型補正予算を組んだが、経済を立て直すには不十分で、小渕恵三首相になってからさらに大きな財政出動が行われてようやく経済が安定を取り戻した。財政出動で経済が安定すると、今度は財政赤字が減って税収が増えてくる。この改善がある程度進んだところで登場したのが、小泉純一郎首相である。

 バランスシート不況は家計の貯金と企業の純借金返済額の合計が、銀行部門に入ったきり出られなくなって、有効需要の減少をもたらすことで始まる。例えば、この合計金額が30兆円以下であれば、国債発行枠30兆円を設けても、デフレギャップが表面化する理由はない。政府支出だけでそのギャップをすべて埋めることができるからだ。ところが当時は、世界的なITバブルの崩壊や9.11同時多発テロで、家計の貯金と企業の純借金返済額の合計額が35兆円から40兆円にまで急増した。

 それなのに、小泉首相は財政再建目標として「国債発行枠は30兆円」と公約してしまった。そうすると、残った5兆円から10兆円の部分が、埋められないデフレギャップとなって、景気の足を引っ張り始めた。その結果小泉首相の就任後の2年間(2001年から2002年)は、経済が大幅に悪化し、税収は再び減少。財政は2001、2002年度と大幅な歳入欠陥になり、財政赤字は35兆円まで増えてしまった。結局、小泉首相は「国債発行枠は30兆円」の公約を一度も達成できなかったのである。

 さすがの小泉首相も2003年になって「国債発行枠30兆円」を放棄する。すると今度は財政がオートマチック・スタビライザー(景気の自動安定化機能)を発揮して、それまで景気の足を引っ張っていた財政が景気にプラスに働くようになり、税収が増えて赤字が減るという形に変わったのである。

 橋本、小泉両政権での財政再建の試みが失敗したことからもわかるように、「誤ったタイミングでの財政再建」は致命的なのだ。



 上記のグラフから見てわかるように、国債の発行を抑えることが財政の規律を高めることとイコールではない事がわかる。消費税を上げても税収が増えなければ財政再建もままならないのだ。

 前政権の福田内閣では2兆円の補正予算を組むべきだとしていたが、この額では”焼け石に水”であって、即効性のある政策とは言えない。

 小泉内閣が国債発行枠30兆円をかなぐり捨ててから、徐々に景気は上昇傾向にあった。おそらく間違いであると気づいたか、そうしなければ対応しきれなくなったからであろう。

 しかし、そんな中早くも恒久的減税であったはずの「定率減税」を停止し、そこへ小麦や原油などの原材料高騰が日本庶民家庭にさらなる打撃を与えたのである。

 麻生政権は場合によっては国債発行を増額してでも大規模な景気刺激策を躊躇していはならないと私は思う。

 毎日新聞なども、麻生内閣の経済政策を即効性に欠けるなどと書きながらも、国債を含めた財政出動には、「またバラマキの借金頼みだ」などという、駄々をこねる子供のような記事を書くのだろう。

 マスコミは誰の命令で記事を書いているのだ?よほど日本経済が回復する事を面白く思わない人間が記事を書いているのか、はたまた書かされているのか。

 前回のエントリーでは、中川昭一氏の「中央公論8月号」に掲載された記事のリンクを貼らせていただいたが、今日はその中身を保存も兼ねてすべて引用させていただく。

 (「真・保守市民の会」からのお知らせの下へ引用掲載しました。)

 賛同や考えさせられる提言が数多くあるので、ブログの記事としてはかなり長くなり疲れる読物となるが、良く読んで理解して考察する材料の一つとして頂きたい。

 1点だけ触れておきたい事が「法人税の減税」だが、ここの部分だけを誇張して取り上げて、「また企業だけを優遇するような政策か!」、「一般庶民の生活よりも結局経団連の言いなりか!」などという、誠に短絡的な批判を展開する方をチラホラ散見する。

 このような方には、「論文を良く眼を凝らしてお読みください」と、言いたい。それでも同じような主張をするのであれば、それは恣意的に曲解して発言しているものと私は理解する。

 兎も角、普通の一般庶民が好き勝手に論評している小さなブログからではあるが、

 中川昭一氏に最大限のエールを送りたい。

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緊急提言・「改革のための改革」を止めよ 日本経済復活のための13の政策=中川昭一(その1)
2008年7月22日 中央公論

今、日本経済は下り坂にある

 世界経済は、原油・資源高とサブプライムローン問題をきっかけとする米国経済の減速などで物価上昇と景気減速に見舞われている。世界同時不況の発生の可能性も否定できない。日本経済も例外ではない。企業物価は二八年ぶりの上昇となり、消費者物価も一〇年ぶりの高い伸びとなって家計や企業を圧迫している。
 
 家計では、一人当たり平均賃金がほとんど上がっていないところに物価高の直撃を受けて、購買力が低下しつつある。企業も、決して楽ではない。とりわけ中小企業や農林漁業では、原材料費が著しく上がる中で価格転嫁が十分にできず、業績が悪化している。消費が弱いこともあって、企業倒産は中小企業中心に増加している。
 
 もっとも、世界経済の減速や資源高の影響は、どの国も被っている。だが、日本経済の問題は、その停滞が世界的に突出していることにもある。日本の一人当たり名目GDPは、一九九三年の第二位から二〇〇六年には第一八位に後退してしまった。一方、社会経済生産性本部が発表している「国民の豊かさの国際比較」では、OECD三〇ヵ国中第七位と健闘している。しかし、中味を見ると、環境指標や健康指標などで上位にあって全体順位を押し上げているが、マクロ経済指標では二二位で、とりわけ平均経済成長率は一人当たり政府累積債務と並んで三〇ヵ国中ビリである。
 
 原油・資源高は著しく、第三次石油ショックの様相を呈してきた。国内を見ても、これから人口は減少していき、自然体では高めの経済成長が見込みにくい状況にある。このまま放置すれば、物価上昇と景気減速が併進するスタグフレーションが所得の低迷と企業業績の更なる悪化を招き、そこに経済の将来への不安の高まりが加わって、消費が減退し、また一段と景気が悪化する「負の循環」が強まりかねない。これでは、多くの国民と企業にとって、ただでさえ将来への期待を抱きにくく、不安が高まる経済状況なのに、現在の豊かささえもしぼみかねない。


国民を犠牲にする改革は本末転倒

 今一刻も早く行うべきは、国民の経済への不安を払拭して豊かさが再び実感でき、将来への希望が持てる経済を構築していくことである。それは、経済成長の停滞とスタグフレーションを加速させる「負の循環」を転換させるということであり、原油・資源高と世界経済の減速を克服し、経済成長を維持するために、「正の循環」に戻す取り組みが不可欠となっているということである。特に、第三次石油ショックのような状況になりつつある中では、大胆かつ緊急な政策対応なくして国民の不安払拭や経済成長を実感できる状態にすることは難しい。
 
 ここで言う「正の循環」とは、世界的な原油・資源高を適切な価格転嫁と家計の賃金アップでカバーし、企業業績の維持と個人消費の拡大を図っていくことにほかならない。当然、それは日本経済の活性化にも結びつくものであり、かつて日本経済が石油ショックを乗り越え、成長力を回復したことの再現を図ることである。
 
 この「正の循環」は、「改革まずありき」の本末転倒な「改革至上主義」を見直すことから始めなければならない。もちろん、日本は巨額の財政赤字を抱えており、財政再建は大事だ。インフレが加速するような原油・資源高の局面では、放漫な財政金融政策の運営はしてはならない。しかし、国民と企業が疲弊し、社会保障のほころびが拡大している現状では、一部で主張されている増税路線や歳出抑制路線の堅持など、何を実現したいのか分からないし、現時点では焦点がずれているとしか言いようがない。
 
 改革は、国民生活と経済情勢を見極めながら行うものである。両者の状況が変化すれば、改革の中味も再吟味しなければならないのは当然である。特に、国民生活が犠牲になりつつある足元の経済情勢では、国民生活を守り、しっかりとした経済成長を実現することこそ最優先でなければならない。国民を忘れた「改革のための改革」を続ける余裕はなく、的外れの改革は即刻止めなければならない。


減税や財政支出も躊躇するな

 国民生活を守り、しっかりとした経済成長を実現するためには、社会保障を大事にする政策と、国民に豊かさの実感を与える政策を打つことが重要である。それは、国民の生活や経済の将来に対する不安を払拭させる政策であると同時に、現在の日本経済の不振を打破する政策でなければならない。
 
 このうち、国民の生活や経済の将来に対する不安を払拭させる政策とは、国民に元気がでるように、経済社会システムを再構築することである。年金制度や長寿医療制度に見られるような現在の経済社会システムの不備は率直に認めて、一刻も早く国民の将来不安解消の方向で制度見直しを図ることが良い。
 
 日本経済を活性化させ、経済停滞を抜け出すことも急がなければならない。経済活性化への道をふさぐような発想と対応が続く限り、経済に活力がでないのは当然である。国民が元気になるような経済政策やメリハリのきいた財政の使い道はいくつもある。インフレには気をつけるべき局面にあり、留意した財政支出をしなければならないが、それでも必要によっては減税や財政支出など躊躇してはならない。
 
 では具体的にはどのような政策があるのか。まず、将来不安からの脱却について述べたいが、足元の経済問題や将来不安の中味は人によってマチマチである。そこで、高齢者の方々、母子家庭、子育て所帯など対象を分けて政策対応を挙げていく。また、後段でまとめて財源についての考え方を示したが、その前提として、対策を明示し、実現に必要な概算額を明記した。


高齢者への対策

 自ら稼ぐ余地が余りない高齢者の方々にとって、年金制度や医療保険制度の行方は大きな関心事であり、制度が劣化している現状では心配も強い。もちろん、生活資金ともなる貯蓄がどう殖えるかも欠かせない関心事だろう。
 
1、年金の物価スライド制復活と長寿医療制度での保険料軽減
 社会保障制度については、将来不安のない制度を心がけていくのは当然であり、年金の物価スライド制の完全復活や長寿医療制度での保険料軽減措置は必要不可欠である。
 
 年金では、過去の物価下落分の一部についてスライドして下がっていないということで、今後の物価上昇の中で相殺解消されることになっている。しかし、物価上昇が加速している現状、このような年金額の実質的な減額改定はもう止めなければならない。(財政負担増:約一一〇〇億円)
 
 長寿医療制度では、与党が軽減措置を決めたが、年金収入しかない高齢者の方々にとって保険料徴収額が増えるのは死活問題であり、こちらも当然な措置である。(財政負担増:〇八年度五六〇億円、〇九年度三三〇億円)
 
 高齢者の金融資産の運用利回りを上げていくことも国として支援しなければならない。これについては、後の証券マル優制度で述べるが、証券投資を対象とする証券マル優制度の導入は、国内で十分活用されていない「カネ」を有効に活用するやり方であり、貯蓄から投資へ資金をシフトすることは高齢者の資産形成にも役立つ。
 
 私は今回の医療制度の改正が「高齢者切り捨て」や「家族の分離」だといった批判を何としても払拭したいと思っている。


母子家庭への対策

 母子家庭では、母親が低賃金のパート労働にしか就業できず、生活保護を受ける世帯も多い。そして、子供の教育費用の負担も困難で、親子世代間で貧困の再生産が生じかねない状況にある。責任がない子供に貧困が引き継がれる事態を起こしてはならず、母子家庭が十分に生活を維持できるための配慮は欠かせない。
 
2、抜本的な少子化対策
 この観点では、抜本的な少子化対策が効果的である。もちろん、少子化対策は母子世帯を守ることを主眼とはしていない。しかし、効果的な子育て支援は、人口減少を抑えて活力ある国づくりに直結するだけでなく、国としても大事な子供を育てる母子家庭を支えることで、貧困の再生産を食い止めることにもなる。
 
 少子化対策の要点は、女性が就業しつづけながら子供を産み、育てられる環境をつくることにあり、女性の就業継続と育児・保育・教育の支援にある。そして、抜本的な少子化対策は、人口減少を止めるだけではなく、女性の労働参加率向上を通じても経済活性化の効果が大きい。
 
 たとえば、少子化対策で大きな効果を挙げているフランスでは、育児・保育・教育に手厚い補助があることに加えて、N分N乗方式の所得税制が導入されている。N分N乗方式の所得税制とは、所得税を個人単位ではなく、世帯単位で課税し、世帯の人数でその所得額を割った額を基準に税額が決まる方式である。分かりやすく言えば、年間所得一〇〇〇万円の世帯が親二人と子供三人の合計五人で構成されているとすると、たとえば年間所得を五で割り、二〇〇万円(一〇〇〇万円の五分の一)に対する所得税を五倍した税額をこの世帯の所得税額とするのである。この形では、子持ち世帯への減税額は大きく、少子化対策としても効果は大きい。
 
 ただし、所得額が少ない母子世帯には所得税減税の効果は薄い。したがって、日本が行う少子化対策では、女性の就業継続支援と育児・保育・教育への手厚い補助に重点を置くことが最優先で、母子世帯に限らず、子育てに必要な最低限の育児費や教育費は国が全部面倒を見るくらいのことをしなければならない。
 
 母子家庭のみならず、多くの女性に働く生きがいと生活力を与え、将来不安の大きい日本に再び夢と活力を与える少子化対策を、どうして今まで本気で実行してこなかったのか理解できない。実行しなかった理由が財源問題とすれば、これこそ本末転倒の最たるものである。このまま日本が衰退することや数千万人の大量移民を受け入れざるを得なくなることよりも財政再建のほうが大事、と本気で思う人々がそういるとは思えない。ならば、実行すればよい。
 
 ちなみに、フランスの実例を基に経済効果を試算すると、年二・五兆円の支援策で出生率の劇的な改善と二〇二〇年にかけて一・五倍に上る経済効果が見込まれる。一方、平成二十年度生活保護費二兆五三億円のうちの母子世帯分(単純比率で計算すると二二一五億円)が少子化対策で軽減される効果も期待できる。


フリーターへの対策

3、基礎年金の全額税方式化
 フリーターは、未熟練労働に従事していることがほとんどで、低所得のまま固定されている。また、国民年金に加入することになっているが、多くは加入しておらず、このままでは家庭を支えるに足る所得も得られず、年金受給年齢となっても生活保護を受けるしかないなど、日本経済だけではなく、社会に与える悪影響も大きい。なにより当人が一番辛いだろう。
 
 もちろん、このようなことが放置されてよいはずはなく、職業訓練や正規雇用者に転換させる取り組みなどが行われている。しかし、年金受給については抜本的な対策は採られないままで、このまま多くが生活保護受給者になってしまうと、必要となる生活保護予算額は年間一七兆七〇〇〇億円から一九兆三〇〇〇億円になるとの試算もある。
 
 若年非正規雇用者の将来不安を払拭するためには、現在議論されているが、基礎年金を全額税方式化するのが適当である。国民年金の未納率が急上昇しているものの、現在の年金制度がこれで存続できるのかということばかりが問題ではない。将来年金を全く受給できない国民が激増することが最大の問題のはずである。そして、多くの国民に、ずっと勤労していたにもかかわらず、年金を支給せず生活保護を与えることは、理屈はともかくとして、先進国の社会保障体制としてはどう見ても失格である。
 
 もちろん、全額税方式にすれば、過去の保険料納付を勘案しない全員一律給付としても一二兆円の財源措置が必要となり、GDP比で二・五%近くに上る財政支出となる。しかし、一方で国民と企業が納付している保険料一〇兆円余りが納めなくてよくなる計算になる。また、現在の国民年金には一〇兆円の積立金が、厚生・共済年金には五〇兆円の基礎年金相当の積立金があると見込まれ、全額税方式とすれば全てが税金で賄われるために不要となる。積立金は過去の保険料を負担してきた人々によって積み上げられたもので、今までの負担者にその分積み増していく資金とするのが適当だが、増税負担が大きくならないよう当初は激変緩和に積立金を活用していく余地はある。いずれにしても、増税実施は、本格的景気回復後にすべきである。
 
4、非正規雇用者と正規雇用者との差の縮小
 非正規雇用者は、賃金のみならず社会保障の位置づけなど、正規雇用者との差が大きい。すでに日本は主要国の中でも最高水準のパートタイマー比率となっているが、制度的な差がある限り、企業はコスト上も有利な非正規雇用者を優先して使い続けることになる。 
 制度上の不合理な差を早急に解消するのは当然で、この差の解消が日本の一人当たり名目賃金の下落を押しとどめ、消費拡大を下支えすることにもなる。また、定年後のシニア人材の活用を進めることも、技能の継承につながるのみならず日本経済の活性化にもつながる。
 
 所得差是正策のひとつは全パート労働者への厚生年金適用である。現在、週所定労働時間二〇時間以上ないし年収六五万円以上のパート労働者への厚生年金の適用拡大が検討されており、最大で企業側負担は三四〇〇億円と試算されている。仮に全てのパート労働者に厚生年金を拡大適用すると、企業側負担は合計で約八二〇〇億円程度と試算される。なお、この企業負担増の部分については、業績が厳しい中小企業での雇用も多いことから、同額程度の法人税減税(後述)と併せて実施する必要がある。
 
 また、最低賃金も上げていかなければならない。すぐに、日本の二倍近い最低賃金水準にある欧州諸国並みとはいかないが、当面経済成長率やインフレ率を上回る年五%くらいずつは引き上げる必要がある。


正規雇用者への対策

 弱者や不合理な待遇にあえぐ人々を救済することは当然としても、まともに働いている正規雇用者についても将来不安や豊かさへの不安は強まっている。毎年行われている「国民生活に関する世論調査」でも、みずからの生活水準を下と見る人々の割合は漸増傾向が続いている。
 
5、定率減税の復活
 これらの人々についても、物価上昇と購買力の低下が鮮明となれば、定率減税を復活させる形で所得税減税を進める。〇八年四月の消費者物価上昇率は前年比でプラス〇・九%だが、仮に〇八年度の物価上昇率を一%とすると、被雇用者の実質購買力は二・六兆円落ちる計算となる。これは、ちょうど定率減税の廃止による負担増約二・六兆円(国税ベース)と見合っていて、定率減税の復活が被雇用者の購買力を維持させる金額になる。
 
6、法人税減税
 将来不安の軽減の一方で、企業や自営業者にとって経済成長を確かなものとする政策も当然行わなければならない。それは基本的には法人税減税である。
 
 法人税の減税効果については、二兆円規模(法人税収の一〇%程度)の減税を行った場合、企業の設備投資が約一兆円増加するとの見方がある。さらに、法人税減税は海外企業の対日直接投資を促進させる効果も期待でき、一〇%の減税は対内直接投資を三〇%も増加させるとする試算もある。これを日本に当てはめれば、一・二兆円の対内直接投資の増加となる。
 
 この法人税減税においては、雇用を支え、日本経済を支える中核の、中小企業への減税を特に重視すべきだ。全てのパート労働者に厚生年金が適用になった場合の負担増加額と、生産性を向上させるIT投資などについての投資促進税制や第三次石油ショック的な状況にあっての事業転換などへの支援も入れて、二兆円の法人税減税を行うことが適当である。
 
 また、将来の経済活性化を展望すると、この減税には投資減税など企業の競争力を強化させるものも含まれる。ベンチャー投資、研究開発、環境や省エネなど将来の技術立国を形づくっていく分野で行うことは、危機的な原油・資源高を克服するバネになるものであり、ぜひ優先して実施しなければならない。また、三年前に米国が行ったような、企業の海外利益の国内送金、特に地方への再投資の減・免税も検討に値する。米国はこれによりGDPを一%押し上げた。



 緊急提言・「改革のための改革」を止めよ 日本経済復活のための13の政策=中川昭一(その2)
2008年7月22日 中央公論

ヒト、モノ、カネを活性化させる

 これまで述べてきた施策以外にも、日本経済を活性化させるために行えることはまだまだ多い。国内には未だ十分に活用しきれていない「ヒト」「モノ」「カネ」がいっぱいあり、リスクを取ってでもこれらを活性化させ、流動化させ、仕事をさせなければならない。
 
「カネ」ひとつ取っても、もっと資金を流動化させ、その運用利回りを上げて、経済に資することができる。GDPの約四割、雇用の約三割を金融関連産業で積み上げているイギリスは別格としても、金融立国化も日本経済活性化の方法である。マネーを一層流動化させ、投資利回りを上げていく方法は種々考えられるが、前に述べた高齢者マル優制度を証券マル優制度として一般的なものと位置づけることは大いに効果がある。
 
7、証券市場の活性化
 国内外からのマネーを証券市場に向けることは、利子配当収入とキャピタルゲインの増加を通じて投資家利益になるなど、活性化効果が大きい。ちなみに、一〇%の株価上昇でも実質GDPを〇・二%押し上げるので、マネーが証券市場に向かって株価を押し上げる効果を軽視はできない。
 
 私は何でもリスクマネーに回せと言っているのではない。個人資産の一部を、より利益を上げる可能性のある部分に回して資産を多様に運用すべきだと言っているのだ。
 
 一人当たり三〇〇万円まで非課税の証券マル優制度の創設は、まさに国内マネーを大いに働かせる制度である。この場合、国民の一割が五%の運用利回りについて非課税(二〇%の源泉分離課税なし)の恩恵を受けることになると、約三八〇〇億円の減税で一・九兆円の家計の所得増と証券市場の活性化、株価の上昇などが期待できる。更に、証券マル優口座にシフトするお金が全て預金から回るとすると、現状からの税収減少額は数十億円程度で済む。導入をすぐに行うべき制度である。
 
8、政府系ファンドの創設
 外貨準備の運用益を原資に政府系ファンドを設立し、国家として収益を目指すこともすぐに行う必要がある。
 
 日本は世界第二位の一兆ドル近い外貨準備高があり、運用は米国債中心で二〇〇六年度の運用益は四兆円(約四〇〇億ドル)近くある。しかし、今のように、この運用益の一部を剰余金として財政赤字の穴埋めに使うだけでは意味が薄い(〇八年度には一・八兆円が繰り入れられる予定)。もっと、地域的にも、金融商品としても、運用を多様化すれば運用利回りを向上させる余地があり、そうなれば財政収支の改善に一層寄与するのみならず、多様な政策の資金源としても活用できる。このような観点から、途上国の経済成長や産業高度化に資する一方で自ら収益を上げる政府系ファンドの創設には利点が多い。
 
 しかし、外貨準備の資産の裏には一〇三兆円に及ぶ負債があり、ハイリスク・ハイリターンを狙うばかりでもいけない。また、資産の中味を入れ替えれば、巨額な米国債の売却となってドル安や米国債の暴落を招きかねない。そこで、政府系ファンドは、外貨準備の運用益部分を原資として始めるのがよい。
 
 せっかく政府系のファンドを創設するからには、そもそも民間ファンドが投資しにくい分野に戦略的に投資することを狙わなければならない。毎年の外貨準備運用益(年四兆円)を政府系ファンドに繰り入れ、それをインテレクチュアル・ファンドとして、後述する今後の日本経済を支える戦略的な技術・知財開発や研究者育成などの投資に充てていく。これこそが、今まで日本人が汗水流して貯めてきた世界第二位の外貨準備の働かせ方としては相応しく、アメリカに義理立てして米国債を持ち続ける以外ないと思い込むよりはるかに良いやり方だ。


規制見直しはもっとできる

 民間活力を引き出す規制見直しや財政投入も、もっと積極的に行うことができる。
 
9、サマータイムの導入
 サマータイムの導入や国内規格のグローバル化は、環境対策や企業活動のコスト削減につながるとともに経済活性化効果も無視できない。
 
 サマータイムを導入すれば、全国民が六六日間テレビを見ない場合と同等の電力節約が実現するとともに、約一兆円の経済効果があるとされる(サマータイム制度推進議員連盟「サマータイム制度について」)。他方で、たとえば信号機の付け替え費約三五〇億円等、制度導入に伴う切り替えコストも官民で発生するが、経済効果や省エネ効果は大きく、二〇一〇年度からの導入を目指している推進議員連盟に賛同する。
 
 なお、経済効果を考えれば、そもそも標準時を一時間進め、その上でさらに夏に一時間進めるサマータイムを導入することも検討に値する。こうすれば東京市場は、世界の主要市場の中ではシドニーと並ぶか、時期によっては追い越し、ニュージーランドのウェリントンの次に早く取引を開始する市場になることで、金融立国を目指す立場からもプラスとなる。
 
10、規格のグローバル化
 日本の諸規格をグローバルスタンダードに改めることは、長い目で見れば企業の無駄な開発費などを抑え、国際競争力を高めることにつながる。電力を例に挙げれば、世界の主流とは異なる一〇〇ボルト電圧、五〇ヘルツと六〇ヘルツの国内で異なる電気の周波数、直流送電などの国内規格である。
 
 今までの国内規格の良さはもちろんあり、海外規格に合わせるだけが良いとは言えない。しかし、いくら良い規格でも、企業や個人に二重投資を強いるものであってはならないし、別な規格がグローバルスタンダードとなっているのであれば、すぐに合わせれば良い。特に、電圧や電力周波数などは規格を変更しても、海外企業に国内市場を席巻されることにはならない。
 
11、都市再生
 電線地中化も含めた都市再生と地方都市のコンパクト・シティ化加速は、将来の豊かな生活基盤を形成するばかりではなく、景観を良好にし観光資源としての都市の価値を高めることにもなる。しかも、都市再生は、容積率の見直しや新たな景観規制の導入など予算の不要な規制の見直しで効果を上げる面も大きい上に、新しい建設需要の発生のみならず都市のエコ対策など環境対応、観光資源化、さらには快適な都市環境の形成など、もたらされる経済効果は多様で大きい。
 
 誘い水としての公共投資は欠かせないが、その財源は現在の公共事業費六・七兆円を骨太の方針に沿って年三%ずつ削減するのを止めて、削減相当額(約二〇〇〇億円)を二十一世紀の一大事業としての都市再生と景観向上、コンパクト・シティ化に投入する。対象となる都市は全国津々浦々にあり、二〇〇〇億円の予算規模では誘い水としても不足だが、毎年三%ずつ公共事業関係費の中味を振り替えていけば、毎年二〇〇〇億円ずつ増額されることになる。
 
12、科学技術立国と世界的な競争力を有する産業育成
 現在は、新たな産業革命が起きる時期とも言われている。企業間の国際競争は国まで巻き込んで激しさを増すばかりだ。そこで、どのような産業革命がいつ生じるかは不透明でも、大きな技術革新(イノベーション)を国家的に進めることは、将来の日本経済を形づくる芽を育てることにつながっている。
 
 政府は、二〇二五年を展望して再生医療、高度介護ロボット、進歩したバーチャルリアリティ技術などの開発を進めようとしている。そして、科学技術基本計画で政府研究開発投資の対GDP比一%(約五兆円)を目指しているが、現実には三・六兆円の予算に止まっている。予算規模を早急に年五兆円に引き上げ、日本が先導する形で次世代の技術開発と日本発の産業革命を推進することが必要である。当然、予算は一・四兆円増加するが、政府系ファンドの創設で資金は賄える。
 
 ところで、日本では博士号取得者が近年増加したのに、十分に活用されていないと言われている。極めてもったいない話である。資源のない日本は科学技術立国として生きていくしかなく、産業革命前夜とも見られる現在は専門知識を持った人材活用のチャンスでもある。
 
13、国際機関の日本への誘致
 最後に、さほど資金負担なく、日本を国際化させつつ経済を活性化させる方策を示す。それは日本に国際機関を誘致することである。国内雇用はもとより多くの海外の専門家が国内に居住したり、国際会議が頻繁に国内で開催されることにつながり、経済効果が大きいのみならず日本の国際化にも大いに貢献する。
 
 現在、主要先進国の中で日本にだけ重要な国際機関の本部がない。国連大学はあるが、これは国際機関の本部とは言えず、研究者はいても学生はいない。国連本部があるアメリカは言うまでもなく、イギリスには欧州復興開発銀行、フランスにはOECDやユネスコ本部、ドイツには欧州中央銀行、イタリアにはFAO(国連食糧農業機関)がある。もっとも、既存の国際機関を海外から日本に誘致することは容易ではない。そこで、食糧危機と絡んで水資源の重要性が世界的に再認識されており、ちょうど日本は水が豊富な国であることもあり、世界水機関(World Water Organization)を創設し、本部を日本に置くことが時宜にかなっている。
 
 更にソフトの外交力強化という点では、世界的に評価の高い、叙勲や名誉博士号等も柔軟に活用すべきである。


積極果敢な経済政策が必要だ

 インフレはまだ続きそうだし、財政再建の展望もないままに財政赤字を拡大することは極力慎まなければならない。しかし、国民に希望を持たせ、経済を活性化させる減税や財政支出を封印してはならない。財政再建も必要だが、景気が急減速しているのに財政再建を強調するだけでは事態は良くならない。「損して得とれ」も国の財政には必要なのだ。良好な名目成長があってこそ財政再建が進むのであり、景気が悪い中での財政再建は景気を更に駄目にしてしまいかねない。体力がないときにダイエットを行ってはならないということだ。
 
 終戦直後、日本は生産力が三分の一に落ち込み、経済は極度の物不足に陥っていた。そのとき、当時の蔵相であった石橋湛山氏は、その後の驚異的な日本経済復興への大きな一歩となる鉄鋼・石炭産業への重点的な資源配分を行った。いわゆる傾斜生産方式の導入である。この重点産業に融資した復興金融公庫が、日銀引き受けによる復興債大量発行を背景としたためにインフレを招いたが、当時の窮乏に喘ぐ国民を支えるために敢えてインフレ退治よりも傾斜生産方式を選んだ石橋蔵相の英断には頭が下がる。足元の経済情勢は当時とは全く異なるが、何がもっとも大事かを見極め、優先順位をつけてタブーなく政策を実行することに変わりはない。
 
 また、足元の状況が第三次石油ショックのようになってきたことからすれば、かつての石油ショック時の政策対応も参考になる。とりわけ第一次石油ショックでは、原油価格の高騰が便乗値上げや買占め・売り惜しみを呼んで物価が高騰したことから、その退治が最優先課題となったものの、物価上昇が沈静化してきた段階では積極的な財政金融政策に転じ、不景気からの脱出が図られた。ここでも、国民の生活を守る積極果敢な姿勢が経済危機を打開し、国民生活を守ったと言える。


国民の将来不安を解消するために

 今回についても積極果敢に国民の生活を守ることが、ああだこうだと理屈をこねるよりも大事なことは言うまでもない。もっとも、今まで述べてきた、国民の将来に希望を持たせ、豊かにする政策を全て実施すると財政負担は二一兆円余りになる。これほどの財政負担を一気に行うことはさすがにできない。しかし、科学技術予算増額と都市再生とコンパクト・シティは、政府系ファンドの資金を投入したり、公共事業減額分を振り替えたりで財源を捻出することができる。また、証券マル優制度の導入は、現在の税収を大して減少させない。こう見ると、全てを財源措置なしで行うには予算額が大きな項目は、少子化対策(二・五兆円)、基礎年金の全額税方式化(一二兆円)、法人税減税(二兆円)、定率減税の復活(二・六兆円)となる。
 
 私は、これから政府が行う投資は、モノ(公共事業)からヒト(個人や企業)へと軸足を移していく必要があると考えている。すなわち、景気対策では、公共事業だけではなく直接困っている個人や企業への補助等で行う方向に向かわねばならないということである。これは欧米では一般的な考え方であり、公共インフラが充実してきつつある日本でも徐々に財政の支出先を変える時期に差し掛かっている。
 
 もちろん、道路がまだ不足している地域は多い。したがって、すぐに公共事業を全面的に止めてヒトへの投資に振り替えろというつもりはない。しかし、六・七兆円ある公共事業費や五兆円ある道路特定財源をヒトへの投資に振り替える余地はある。この振り替え分を、少子化対策と法人税減税を数年かけて完全実施する前提で、その財源に充当する。もっとも、以上述べた経済対策で経済はかなり活性化する。その結果もたらされる税金の自然増加部分を組み込んでいけば、早期に完全な少子化対策と法人税減税を行うことは可能だ。
 
 定率減税の復活は、インフレが急激に高まるようだと火に油を注ぎかねず、慎重な対応が欠かせないが、景気が悪化した段階での経済対策として行うのが適当だ。景気対策が必要となれば、少子化対策と法人税減税もこれに組み込んですぐに完全実施する。なお、定率減税の復活分は、景気が回復したり、企業がインフレスライド的な賃上げを行った折には、縮減・廃止する。
 
 いろいろなやり方が考えられるのが基礎年金の全額税方式化である。景気回復後に、一方で国民年金と厚生年金を足して六〇兆円ある積立金を取り崩しつつ、他方で国民の保険料負担がなくなる一〇兆円規模にまで消費税を数年かけて拡大していくのが私の考えである。消費税は上がることになるが、保険料負担がなくなるとともに六〇兆円もの資金が国民に還元されることで、全体として景気刺激効果は極めて大きく、これだけでGDPを年一%内外押し上げることになる。だから、その移行の段取りは、景気とインフレの動きや他の活性化策の実施状況などを見ながら決定しなければならない。
 
 更に緊急対策ではないが、避けて通れない本質的議論としては、やがて(あるいは既に)耐用年数の過ぎたインフラ更新対策も念頭に置かなければならない。道路、橋、トンネル、電線等々、官民合わせて多分野にわたる。水関係だけでも、水道三八兆円、下水道七五兆円、合計一一三兆円の更新コストが必要との試算もある。これらは財政健全化のためにやらないというわけにはいかない。
 
 やり方次第でメリハリのきいた財政政策を採る余地はあり、別に財政再建や歳出削減に呪縛される必要はない。むしろ、何のために緊急経済対策をするのかということこそ、まず考えなければならない。もちろん、それは改革のためや大企業・株主のためではなく、国民の将来不安を解消するためであり、そして将来の豊かな日本経済を構築するためである。国民が将来に不安を強く抱き、厳しい経済情勢になってきている今こそ、タブーなく真に国民にとって必要な緊急経済政策を打たなければならない。




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テーマ : 政治・経済・時事問題 - ジャンル : 政治・経済

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